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【第0章第12話】Youtuberにはお金がかかる現実

ゲーム実況への憧れは日に日に募るが、3DSの「魔改造」という壁は、当時の俺にとってはあまりにも高すぎた。ならば、PCでできることは何だろう? その問いが、俺を次の行動へと駆り立てた。

目次

Youtuber活動に必要な機材:当時の現実と、俺の環境

Youtuberとして動画を制作し、公開するためには、いくつかの最低限の準備が必要だと、インターネットの情報を漁る中で理解した。

当時、動画投稿サイトで公開されている先駆者たちの情報を徹底的に調べ上げたのだ。

彼らの動画の概要欄や、ブログでの解説記事を読み漁ることで、必要な機材と知識の輪郭が少しずつ見えてきた。

まず、動画を撮影するためのカメラと、編集やアップロードを行うためのPCは、絶対に欠かせない。これは、Youtuber活動の根幹をなす機材だ。

今(2025年)となれば、高性能なスマートフォンさえあれば、Youtubeshortのような短尺動画であれば、誰でも簡単に撮影・編集・投稿ができる時代になった。

スマートフォンのカメラ機能は格段に進歩し、動画編集アプリもプロ並みの機能を備えている。

しかし、2015年当時は、スマートフォンの性能は今ほど高くなく、動画制作に特化したアプリなどもまだほとんど存在しなかった。

当時のスマホのカメラは、あくまで手軽なスナップショットや簡単な動画を撮るためのもので、本格的な動画撮影や編集には向いていなかったのだ。画質も音質も、今と比べれば格段に劣っていた。

しかも、俺に至っては、まだスマートフォンではなくガラケーを使っていたという事実がある。

友人たちはぼちぼちスマホを持ち始めていて、LINEなどのSNSアプリでやり取りをするのが当たり前になりつつあったが、俺はまだガラケーでも十分に日常生活を送れる年齢だったし、友人との連絡手段としては事足りていた。

通話やメールができれば、それで十分だと考えていた。それに、スマホに関しては、特に必要性を感じていなかったのだ。当時の俺にとって、PCが生活の中心であり、情報収集や趣味活動の主力だったからだ。

ゲームも、インターネットも、全てPCで行っていた。スマホの小さな画面で動画を編集するなんて、想像すらできなかったし、その必要性も感じていなかった。優先順位として、スマホの購入は高くなかったのだ。

PC以外に必要な機材としては、コンシューマーゲーム機を実況するなら、その映像をPCに取り込むためのキャプチャーボードが不可欠だ。

これは、ゲーム機の映像信号をPCで認識できるデジタルデータに変換する機器で、これがないとゲーム画面を録画することすらできない。

当時のキャプチャーボードは、現在ほど性能が良くなく、また値段もそれなりにするものが多かった。

さらに、音質を改善し、クリアな声を届けるためには、質の良いマイクや、ゲーム音と自分の声をバランスよく聞くためのヘッドフォンも必要になる。ソフトウェアに関しては、録画ができるものなら何でもいいだろう。フリーソフトでも十分な機能を持つものがいくつか存在していたが、使いこなすにはそれなりの知識と経験が必要だった。

「無理だ…」と絶望、そして「ゆっくり実況」という光明

Youtuberとしての機材の情報を集めれば集めるほど、俺の心は重くなった。

カメラやキャプチャーボード、マイク。どれもそれなりの値段がする。

当時の俺には、それらを購入する経済力はなかった。

貯めていたお小遣いでは、とてもじゃないが手が届かない金額だ。ゲーミングPCは親に買ってもらったが、これ以上親に金銭的な負担をかけるのは気が引けた。何より、Youtuber活動が本当に成功するのかもわからない中で、高額な機材をねだる勇気もなかった。

「結局、今の俺にできることは何もないのか…?」

諦めにも似た感情が胸をよぎった。自分の力でできることが、あまりにも少ないという現実に直面したのだ。

憧れのYoutuberたちとの間に横たわる、埋めがたい「格差」を痛感した。彼らが当たり前のように使っている機材が、俺にとっては手の届かない「贅沢品」だった。

しかし、その時、俺の頭の中に、一筋の光明が差し込んだ。それは、俺が「某妖怪」のゲーム実況で夢中になって見ていた、あの**「ゆっくり実況」**だ。あの、可愛らしいキャラクターが合成音声で喋る動画。顔出しも、生の声も必要ない。

「そうだ。俺のPCだけあれば、できることがあるじゃないか。」

俺はそう結論付けた。ゆっくり実況であれば、顔出しも声出しも不要だ。

だから、高価なカメラは必要ない。ゲーム実況であっても、俺がプレイする3DSの画面を直接取り込む必要はない。PCゲームの実況や、ソフトウェアの解説動画、あるいはオリジナルのストーリー動画など、PCの画面録画機能を使えば、様々なコンテンツを作れるはずだ。

いや、もっと言えば、ゲーム実況にすらこだわる必要はないのだ。自分が描いたイラストを動かし、物語を作ることもできる。

「ゆっくり実況なら、最悪PCだけであれば良い話だ。」

これは、まさに俺が求めていた「無理なく、リスクなく始められるYoutuber活動」の形だった。

キャラクターの立ち絵は自分で描けばいい。フリーソフトで動画編集もできる。そして、何よりも、ゆっくり実況の特徴である合成音声を使えば、自分の声を使う必要もないため、親のプライバシーに関する懸念もクリアできる。親が懸念する「世間に顔や声が知られる」というリスクを回避できるのだ。

この夏休みは、俺にとって「某妖怪」ゲームに没頭する期間であると同時に、Youtuberとしての具体的な活動の方向性を定めるための調査期間でもあった。

俺は、インターネットに散らばる情報を集め、ゆっくり実況の制作方法について徹底的に調べ始めた。どのようなフリーソフトがあるのか、どのようにキャラクターを動かすのか、どんな編集テクニックがあるのか、BGMや効果音はどこから入手すればいいのか。俺は、まるで未知の技術を解析する科学者のように、一つ一つの情報を吸収していった。

それは、途方もない作業のように思えたが、Youtuberになりたいという強い気持ちが、俺を突き動かしていた。

それは、引きこもりという形を取りながらも、俺の頭脳がフル回転し、創造性が刺激される、非常に活動的な夏だった。

そして、この夏の調査が、俺がYoutuberとして最初の一歩を踏み出すための、重要な準備期間となることを、この時の俺はまだ知る由もなかった。

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