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【第0章第2話】なぜだかしらんけど・・・

校門をくぐり、広大な敷地に足を踏み入れた瞬間、俺は思わず息を飲んだ。

中学の校舎が可愛らしく思えるほど巨大な建物がそびえ立ち、その奥には実習棟や温室、さらには広大な畑が広がっているのが見えた。まさに「高校」という名にふさわしい光景?というのだ。

多くの生徒たちがそれぞれの入り口へと吸い込まれていく中、俺もその流れに身を任せた。

下駄箱で上履きに履き替え、案内板で自分のクラスを探す。

この高校には12のクラスがあり、俺は2組に配属されていた。廊下は生徒たちのざわめきで満たされ、真新しい制服の群れがまるで生き物のように蠢いている。

中学時代の知り合いは他の高校に行ったためほぼいない。

皆、俺と同じように少しばかりの緊張と、それ以上の期待を抱えているのだろう。

教室の扉を開けると、そこにはもう多くの生徒が集まっていた。

空いている席を探し、窓際の席に腰を下ろす。隣の席の生徒は、俺と同じく真新しい制服を着た男の子だった。

まあ本当は男だけなんだけどな

目が合うと、お互い気まずそうに、けれど少しだけ期待を込めて微笑み合った。

「よろしく」

俺が先に声をかけると、彼も「よろしく」と返してくれた。名前は…まだ知らない。

でも、これから始まる3年間で、きっと多くのことを共有する仲間になるんだろう。そんな予感がした。

ホームルームが始まるまでの間、教室を見渡してみた。中学の教室よりもだいぶ狭い。

それは特別支援学校で8人クラスだからというのもあるけど、もともとの教室を半分に区切っていくスタイルはなんとも新鮮だった。

黒板には、担任の先生の名前と、今日の予定が書かれている。全てが新しく、何もかもが新鮮だった。

だが、俺は直感的に「大きく生活が変わるな」と感じた。

物理的な変化はもちろんだ。朝早く起きて長距離通学すること、専門的な内容を学ぶこと、そして何よりも「就職」という目標に向かって学ぶということ。

それらは、中学までのいきいきとしてのんびりとした学校生活とはまるで違う。

だが、俺が感じた変化はそれだけではなかった。もっと深い部分、つまり精神面での変化だ。

まだ始まったばかりなのになぜそれを思ったのかはこのときは何も意味はわかっていない。
当時の俺はろくにPCスキルもなければ、頭も悪いし、今のままの価値観だったら間違えなくわるいやつに搾取される。

「みんな、これから3年間、一緒に色々なことを学んでいきましょう。専門的な知識だけでなく、社会に出て通用する力を身につけてほしいと思っています。分からないことがあれば、遠慮なく質問してくださいね。」

先生の言葉は、まるで俺の胸に直接語りかけるようだった。

中学までは、ただ漠然と日々を過ごしていた。将来のことは、まるで遠い未来の話のように感じていたし、深く考えることもなかった。けれど、この高校に入った瞬間から、その感覚は一変した。

この学校は、俺たちを「社会」へと送り出すための準備期間なんだ。

だが、社会に送り込むというのはまだ俺にはその実感はなかった。

漠然とした不安もあったけれど、それ以上に「自分は何者になれるんだろう」「どんな仕事に就くんだろう」という好奇心が湧き上がってきた。

新しい環境、新しい仲間。不安も大きいけれど、それ以上に新しい自分に出会えるかもしれないという期待が、俺の胸の中で膨らんでいた。

この日の放課後、俺は初めての武蔵野線での帰路についた。満員電車に揺られながら、今日の出来事を反芻する。

中学時代とは全く異なるライフスタイル、そして精神的な変化。すべてがまだ始まったばかりだけど、この3年間が、俺の人生に今後においてとってかけがえのないものになるだろうという予感だけは、確かだった。

この時点では、俺がYouTuberに憧れ、クリエイターの道を志すことになるとは夢にも思っていなかった。

特例子会社での苦悩も、そこを退職して独立し、ブログを立ち上げ、そして最終的にメタバース『TITAN学園』を創造することになるなんて、想像すらしていなかった。

この高校での出会いや学び、そして経験のすべてが、俺の人生の道を形作っていく。

まさに、この入学の日が、俺の壮大な物語のプロローグの終わりであり、本当の本編の始まりだったのだ。

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