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【第0章第23話】ゲーミングPC爆誕!

社会人となって1ヶ月が経ち、俺は少しずつ会社の仕事にも慣れてきていた。朝ラッシュの満員電車に揉まれ、時には理不尽な指示に頭を下げながらも、なんとか日々の業務をこなす。

しかし、そんな社会人生活の裏側で、俺のYoutuber計画は着々と進んでいた。

高校時代に抱いた夢は、社会の荒波に揉まれても、決して色褪せることはなかった。むしろ、目の前の現実が厳しさを増すにつれて、その夢への渇望は、より一層強くなっていった。

そんな矢先、家で問題が発生した。これまで使用していたPCが、ついにその寿命を迎えてしまったのだ。

目次

愛機との別れ:ブルースクリーンが告げる終焉

俺のPCは、もともと購入してから数年が経過しており、少しずつその老朽化を感じていた。

起動は恐ろしく遅く、OSが立ち上がるまでに数分かかるのは当たり前だった。

アプリケーションをいくつか立ち上げればすぐにメモリが不足し、作業中にフリーズすることも頻繁に起こる。特に動画編集作業などは、その遅さに苛立ちを覚えることもしばしばだった。

レンダリングに何時間もかかり、プレビューはカクカク。少し複雑なエフェクトを加えようものなら、すぐにアプリケーションが落ちてしまう。それでも、だましだまし使い続けてきたのだが、ついにその限界が訪れたのだ。

ある日、いつものようにゲームを行っていると、突然画面が青一色になり、白い文字が羅列される「ブルースクリーン」が発生した。

冷たいエラーメッセージが、俺の作業を無慈悲に中断させる。何が起こったのか理解できないまま、呆然と画面を見つめた。電源ボタンを長押しして強制終了し、再び起動を試みる。

しかし、結果は同じだった。ブルースクリーンが繰り返し表示され、OSが正常に立ち上がることはない。何度再起動を試みても同じ症状を繰り返し、俺の愛機は完全にぶっ壊れてしまったのだ。

これまで、動画編集や情報収集、ゲームなど、Youtuberになるという夢を追いかける上で、常に俺の傍らにあった相棒だった。高校時代から、寝食を忘れて触り続け、俺のアイデアを形にするための唯一無二のツールだった。

それが突然動かなくなるというのは、まるで片腕を失ったかのような喪失感があった。焦り、そして絶望感が俺の心を覆った。このままでは、Youtuberとしての活動どころか、日々の情報収集や、友人との連絡すらままならない。

デジタル化が進む現代において、PCがないというのは、まさに手足を縛られたような状態だった。そのため、PCの買い替えは、もはや避けられない、緊急の事態となった。

次世代GPUとの出会い:PCはGeforce GTX 1080 Tiへ

壊れてしまったPCを前に、俺はすぐに次の手を考えた。だが、当時、どういうPCに買い替えるかについては、実はもう割と決まっていたと言っていい。

というのも、俺の心はすでに、2017年2月28日にNVIDIAから登場したばかりの、あのGeforce GTX 1080 Tiという新商品に奪われていたからだ。

その発売ニュースをネットで目にした瞬間から、俺の頭の中は、このGPUを手に入れることでいっぱいだった。

当時のゲーミングPCは、今ほど一般的ではなく、一部のマニアックな層が使うものという認識が強かった。

しかし、その性能は日進月歩で進化しており、まさに最先端を行く技術の結晶だった。特に、高解像度のゲームを快適にプレイしたり、動画編集のような重い作業を効率的にこなすためには、高性能なGPU(グラフィック処理装置)が不可欠だった。Youtuberとして活動していく上で、動画のレンダリングやエフェクト処理、高画質での配信など、GPUはかなり求められる性能があった。

むしろ、GPUの性能が動画のクオリティと直結すると言っても過言ではなかった。

だから、このGeforce GTX 1080 Tiを搭載したPCを決行することにしたのだ。それは、もはや衝動に近い決断だった。冷静な判断力を失うほどの、強い欲望が俺を突き動かしていた。

価格は、実に40万円という大金だった。

社会人になって間もない、デビューしたばかりの俺にしては、あまりにも贅沢すぎる買い物だ。

当時の俺の給料から考えれば、3ヶ月分に匹敵する、とてつもない額だった。

ほとんど独断で決めた。親に話せば、間違いなく反対されるだろう。そんなことは百も承知だった。しかし、俺は自分を納得させる、もっともらしい理由を見つけた。

5年、いや、もしかしたらそれ以上使うことを考えれば、決してそこまで高くない買い物だと言い聞かせた。高性能なPCは、Youtuberとして活動していく上で、何よりも重要な「投資」だと考えたのだ。この投資が、将来の成功への道を切り開いてくれるはずだと、強く信じていた。俺の「ポジティブ思考」が、この無謀な衝動買いを正当化させていた。

また、これまで使用していたPCはノートPCだったが、今回はデスクトップPCに逆戻りすることにした。

ノートPCは持ち運びができるというメリットはあるものの、その分、性能面ではデスクトップPCに劣る。

特に、高性能なGPUを搭載するには、デスクトップPCの筐体と、強力な冷却性能が不可欠だった。

排熱の問題や、拡張性などを考慮すると、Geforce GTX 1080 Tiという高性能GPUを最大限に活かすには、デスクトップPC以外の選択肢はあり得なかった。

まあそもそもGTX 1080 Ti自体そのものは300w前後まで寄せるほど消費電力が高いため、ノート版はなかったが・・・

これは性能がすごく上がる分、致し方ないことだと割り切った。

デスクトップPCは持ち運べないというデメリットがあるが、Youtuberとして活動していく上で、動画編集やライブ配信の効率を極限まで高めるためには、モニターを2台、あるいは3台と増やしていくことが必須だと考えていた。

広い作業スペースは、クリエイティブな活動の効率を格段に向上させる。そう考えると、デスクトップPCこそが一択だった。

最高の環境で最高のコンテンツを作り出す。それが、俺の哲学だった。


新しい相棒の到着:Youtuberへの夢、再び加速するはずが…

注文から数週間、待ちに待った俺の新しい相棒は、5月下旬に自宅へとお出迎えされた。

大きな段ボール箱に入った、ピカピカのデスクトップPC。それは、まるで最新鋭の宇宙船が届いたかのような、興奮と期待を俺に与えた。

緊張しながらセットアップを済ませ、電源を入れる。起動は信じられないほど速い。

これまで数分かかっていたOSの立ち上がりが、数秒で完了する。HDDだった前のPCとは比べ物にならない。

今でこそ当たり前だが、当時最先端だったNVneM.2 SSDに変わったのだから、快適になっていくのは当然だ。

あらゆる動作がサクサクと動き、まるで世界が変わったかのようだった。

もちろん、その性能はかなり快適だった。動画編集ソフトを立ち上げると、レンダリング速度は前のPCよりも10倍以上も上がっている感覚だった。

これまでのイライラが嘘のように、スムーズに作業が進む。複雑なエフェクトも、瞬時に適用される。ゲームも最高設定でヌルヌル動き、その映像美と没入感に思わず息をのんだ。

これまで体験できなかった、圧倒的なパフォーマンス。まさに、俺が求めていた「ハイエンド」な体験が、そこにはあった。これで、Youtuberとしての活動も、飛躍的に加速するはずだ。高品質な動画を量産し、多くの視聴者を引きつけ、一気にチャンネル登録者数を増やすことができる。

そう確信した。新たなPCは、俺の夢への翼となるはずだった。

こうして、新たなPCをお出迎えし、Youtuberとしてデビューするために、色々と準備を始める……。

はずだった……。

この新しいPCを手に入れたことで、俺のYoutuberへの夢は、これまで以上に明確な形を帯び始めた。頭の中では、次々と新しい動画のアイデアが浮かび、早く形にしたいと逸る気持ちが抑えきれない。

しかし、社会人として始まったばかりの生活は、想像以上に俺の時間を奪い、体力を消耗させた。朝早く起きて満員電車に揺られ、慣れない事務作業をこなす日々。夜遅くに帰宅し、疲れた体でPCの前に座っても、なかなか集中力が続かない。週末も、平日の疲れが残っていて、思うように時間が取れない。

理想と現実のギャップが、少しずつ、しかし確実に、俺の心に影を落とし始める。高性能なPCが目の前にあるのに、それを活かすだけの時間とエネルギーがない。それは、まさに宝の持ち腐れだった。

この高性能なPCが、その後の俺の人生で、どのような役割を果たすことになるのか。

そして、俺のYoutuber計画は、果たして予定通りに進むのだろうか。この時はまだ、誰も知る由もなかった。希望と焦燥感、そして社会の現実という、複雑な感情が入り混じった、新たなステージが始まろうとしていた。

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