盲腸の痛みに耐えながら過ごした修学旅行2日目の夜が明け、3日目を迎えた。
幸いにも、前日よりは痛みが和らいでいた。この日は、台湾市内の観光をメインに楽しむ日だ。体調は万全ではなかったが、せっかくの海外旅行。できる限り楽しもうと、気持ちを切り替えた。
3日目:台北市内の散策と、忘れられない体験
バスに乗り込み、台北市内へと向かう。
都会の風景の中に、異国情緒が入り混じる独特の雰囲気は、何度見ても飽きることがなかった。様々な場所を訪れたが、その中でも特に印象が強く残っている体験がいくつかある。
足つぼマッサージ:痛みの先に広がる感覚
まず、最も記憶に強く残っているのは、足つぼマッサージだ。
観光プランの中に組み込まれていたようで、半ば強制的に体験することになったのだが、これがまた強烈だった。清潔な店内に案内され、椅子に座ると、熟練のマッサージ師が俺の足に触れる。最初のうちは、くすぐったい感覚が先行したが、すぐにそれは強烈な痛みへと変わった。
「うっ…!」
思わず呻き声が漏れる。マッサージ師は、俺の足の裏の特定のポイントを、指の腹や関節を使って容赦なく押していく。その痛みは、まるで足の骨が砕けるのではないか、あるいは「なんかもげそうな感じがした」と表現するのが一番適切だろう。
今まで経験したことのない種類の痛みだった。隣にいた友人も、顔を歪ませて声を上げていた。
マッサージ師は、俺たちの悶絶する姿を見て、にこやかに笑っている。それがまた、なんとも言えず悔しかった。
しかし、不思議なことに、痛みの後には、足全体がじんわりと温かくなり、血行が良くなったような感覚があった。そして、足が驚くほど軽くなったのだ。あれほど痛かったのに、終わってみれば心地よさが残る。まさに「痛いけど気持ちいい」という、不思議な体験だった。
身体的な感覚への好奇心を掻き立てた。痛みの先には、新たな発見がある。そんなことを、足つぼマッサージは教えてくれたのかもしれない。
台湾スイーツ:規格外のかき氷に驚愕
次に印象強かったのは、台湾スイーツだ。特に、かき氷がでかいことには本当に驚かされた。日本の一般的なかき氷の、ゆうに2倍はあろうかというサイズ感だ。色とりどりのフルーツがふんだんに盛り付けられ、練乳やソースがたっぷりとかかっている。
見た目も非常に鮮やかで、SNS映えしそうなビジュアルだった。
友人とシェアすることを前提としたサイズなのかもしれないが、それでも一人で食べ切るのは至難の業だ。
俺も、何とか食べ進めようとしたが、あまりの大きさに途中でギブアップしてしまった。
冷たさと甘さが口いっぱいに広がり、体調が万全であればもっと楽しめたのに、と悔やんだ。
この時、盲腸の痛みで食欲が落ちていたことが、さらに俺を苦しめた。せっかくの美味しいスイーツが、目の前にあるのに。この「大きさ」と「豪華さ」は、俺の「ハイエンド」が求める「極限」の体験とは少し異なるが、そのボリューム感には圧倒された。
台北101:台湾の象徴、巨大な建築物
そして、台北市内の観光のハイライトの一つが、台北101だ。
かつては世界一の高さを誇ったこの超高層ビルは、その名の通り、まるでタケノコのように空に向かってそびえ立っていた。見上げるほどの高さに、ただただ圧倒される。
「あれはでかかったな~」
思わずそう呟くほどの威容だった。中は普通のショッピングモールやオフィスビルになっており、観光客だけでなく、多くの人々で賑わっていた。この時はまだ旅行ブームというほどではなかったが、それでも人は混んでいた。高速エレベーターで一気に展望台まで昇ると、台北市街が一望できる。眼下に広がるビル群や、遠くに見える山々。その壮大な景色刺激された。
これほどの巨大な建造物を設計し、建設するには、どれほどの技術と知恵が必要だったのだろうか、と想像力を掻き立てられた。
4日目:旅の終わり、そして帰国
最終日の4日目は、正直なところ、帰っていたことぐらいしか覚えていない。
3泊4日の短い旅だったが、濃密な体験の連続で、記憶が混濁していたのかもしれない。
でも、確かヒルぐらいに帰っていたから、ホテルで朝食を食べて、そのまま空港へ向かい、日本へ帰国したぐらいだと思う。
成田空港に到着し、入国手続きを終えて日本の空気を吸い込んだ時、ようやく旅が終わったことを実感した。慣れ親しんだ日本の風景、日本語が飛び交う空港。全てがどこか懐かしく、安堵のため息が漏れた。
こうして、俺の高校生活で初めての海外、台湾修学旅行は、とても楽しい思い出として幕を閉じた。
体調不良という予期せぬアクシデントはあったものの、異文化に触れ、新しい価値観に気づかされる、非常に貴重な経験だった。
その後、この修学旅行で取得したパスポートは、家族旅行で一度だけ使用したが、それ以降、海外へ行く機会はしばらく訪れなかった。
旅の終わり、そして未来への布石
こうして、楽しい修学旅行は終わり、俺の高校生活は最終盤へと進んでいく。いよいよ就職という現実が、目前に迫っていた。
だが、この台湾での経験は、俺の中に新たな視点をもたらした。特に、台湾で見た「仕事に関する文化」は、俺の社会に対する見方を変えるきっかけとなった。
効率性だけでなく、人間らしさやコミュニケーションを大切にする働き方。それは、将来自分が働く場所、あるいは自分が創り出す場所は、もっと人間らしい場所であるべきだという、漠然とした理想へと繋がっていった。
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