にゃももが、自分を取り囲む生徒たちの視線に戸惑っていた、その時だった。人混みをかき分けるようにして、一人の紫髪の女性が現れた。彼女は、にゃももの前に立ち、周囲の生徒たちを一瞥した。
「ほれ!彼女に憧れる気持ちはわかるけど、そもそも今昼休みの時間。彼女の時間を奪うのではない!」
女性の声は、凛としていて、それでいてどこか威厳があった。生徒たちは、その声を聞くと、まるで魔法が解けたかのように、すぐにざわめきを収めた。
「あなたは!ゲーム部長!?」
生徒の一人、あいが驚いたように叫んだ。
「ゲーム部!?の部長!」
にゃもももまた、驚きを隠せない。ブラウニーから、この学園には様々な「部活」があるとは聞いていたが、まさかこんなところで出会うとは。
紫髪の女性は、フッと笑みを浮かべた。
「ほら!わかったなら自分の時間に挑むんだな」
彼女の言葉に、生徒たちは「はーい!」と元気よく返事をして、それぞれの場所へと散っていった。あっという間に、にゃももの周囲には空間が生まれた。
「ほれ、もう通れるはずだから!」
女性はにゃももに道を譲るように促した。にゃももは、彼女の毅然とした態度に感謝の気持ちが湧き上がった。
「ありがとうございます…」
「あなたのことはすいれんやブラウニーに伝えられています。もし時間があれば、ゲーム部へ足を踏み入れていくことも推奨いたします」
女性はそう言って、にゃももにウインクをした。
「宣伝か??」
にゃももは思わず呟いた。まるで、ゲーム部の勧誘のようだった。しかし、彼女のおかげで、にゃももは一息つくことができた。
昼食の探索とにゃもものお友達
そんなこんなで、にゃももは改めて昼食を探しに、レストラン街を歩き始めた。学園内の至る所に店が並び、どこも美味しそうな匂いが漂っている。一体どこで食べようか、迷ってしまうほどだ。
その時、前方に聞き慣れた声が聞こえた。
「よ!今日はぼっち行動かいな!」
振り返ると、そこにいたのは、元気いっぱいのすいれんちゃんだった。彼女の隣には、見慣れない少年と、昨日助けた瑠璃の姿がある。どうやら、すいれんちゃんのお友達らしい。
「すいれん、流石にいきなり目上の人に失礼だって…」
すいれんの隣にいた少年が、たしなめるように言った。彼は、どこか真面目そうな雰囲気を持っている。
「ああ!生徒会長!じゃん」
瑠璃がにゃももに気づき、目を輝かせた。その言葉に、すいれんの隣の少年は驚いて声を上げた。
「ええ!?生徒会長!?」
少年は、にゃももをまじまじと見つめた。そして、慌てたように姿勢を正し、ぺこりと頭を下げた。
「ちょっ!まずいじゃん!ちゃんと礼儀よく言わんくちゃ!」
彼の慌てぶりに、にゃももは思わず笑ってしまった。
「あーいいよいいよ!ここまで固くかしこまらなくても!友達だし」
にゃももは、親しみやすい雰囲気で言った。すると、すいれんが胸を張って付け加えた。
「そうよそうよ!なにせにゃももお姉ちゃんとすいは姉妹関係みたいなんだから!」
「いやそこまではたどり着いてないから…」
にゃももはすいれんの言葉にツッコミを入れた。血縁関係がないことは、昨日確認済みだ。
「それで、すいれんちゃんのお友達かな?」
にゃももが尋ねると、真面目そうな少年が自己紹介をした。
「かずまです。よろしくお願いします」
彼はきちんとした口調で挨拶した。
「うちはさっきしたからスルーで」
瑠璃は、にゃももにウインクした。彼女は昨日よりずっと明るい表情をしている。
「すいも何度も会っているから今更だよねー」
すいれんもまた、得意げに言った。
「なんか僕だけ仲間外れ感がすごいような…」
かずまが小さく呟いた。にゃももは、そんな彼を見て、クスッと笑った。
「よろしくね、かずまくん!それで3人は、お昼はもう食べたかな?」
「いえ、まだ食べていなくて…今、どこにしようか迷っているんです」
かずまが答えた。
「ねぇねぇ、にゃももお姉ちゃん、いい飯ない?」
すいれんが、おねだりするように聞いてきた。にゃももは困ったように首を傾げた。
「うーん、そんなこと言われても、私まだ入学してから2日目だから、どこが美味しいとか、よく分からないんだよね…」
にゃももの言葉に、かずまがすかさずツッコミを入れた。
「それににゃももさんが言うセリフじゃん!」
その時、瑠璃が何かをひらめいたように声を上げた。
「お!あの中華店はどうかな?最近できたばかりみたいで、料理部がやっているって生徒会の間で話あったんだ!」
「料理部って、料理スキルだけ身につけると思ったけど、店まで展開しているのか…」
かずまが驚いたように呟いた。
「なんでもありだからね、この学園」
瑠璃は、この学園の常識を当たり前のように受け入れている。
「なんだか『料理部』というのがパワーワードね!よし、ここに行ってみない?」
にゃももは、その言葉に興味を引かれた。料理部が店を経営しているとは、まさにこの学園ならではだ。
「いいわね!じゃあにゃももの奢りで!」
すいれんが、即座にそう言い放った。その言葉に、にゃももは思わず「え…!」と声を上げた。昨日、食べ放題のスイーツで散々奢ったばかりだ。
「すいれん、流石にそれはあかんって!」
かずまが、すいれんをたしなめる。
でも思い出した…
「そういえばおこづかいについては…くろとに目をつけられていたんだった…」
すいれんが、何かを思い出したように、小さく唸った。その言葉に、にゃももは昨日のくろとの「監視社会」発言を思い出す。
「これぞ監視社会というやつか…」
にゃももは呆れつつも、笑ってしまった。結局、奢りは回避できたようだ。
こうして、にゃももとすいれん、かずま、瑠璃の4人は、料理部が運営する中華店へと足を踏み入れた。どんな料理が、どんな生徒たちによって提供されるのだろうか。にゃももは、新しい発見に胸を躍らせていた。
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