マキノはTITAN学園の農業部からログアウトすると、すぐに自宅のPCを切った。
顔には恐怖と焦りが浮かんでいる。接続先は、彼女が所属する謎の組織の、とある秘密会議室のサーバーだ。ホログラムで映し出された空間には、マキノの上司らしき人物が険しい表情で立っていた。
その顔は、陰鬱な闇に包まれており、表情を読み取ることはできない。
「何だと!?あの校長に、お前の行動がバレてしまったのか!?」
上司の低い声が響き渡る。怒りを含んだその声に、マキノは身を縮こまらせた。
「はい…大変申し訳ございませんでした…アカウントはすぐさま消しましたが…おそらく私は特定され、時間の問題かと…」
マキノは、震える声で報告した。額には脂汗が滲んでいる。
「あれほど子供を売上の手段としてこき使うと面倒なことを起こすとは言ったのに」
上司の言葉は、まるで氷のように冷たかった。マキノは顔を伏せ、反論することすらできない。
「これまでは、ごうとの特性をうまく使いこなして、なんとか盗んで隠れて潜んでいましたが…」
「言い訳するんじゃねぇ!子供というのは嘘をつかすのが苦手だ。費用対効果が割り合わねぇ」
上司は、マキノの言い訳をバッサリと切り捨てた。彼の言葉からは、徹底した合理主義と、目的のためなら手段を選ばない冷酷さが伺える。
「はい…申し訳ございません…損失を被った私は、やはりクビでしょうか…」
マキノは、最後の望みをかけるように尋ねた。この組織から追放されれば、彼女にはもうどこにも居場所がない。
「本当は懲戒をしたいところはやまやまなんだが、このご時世、個人主義が風当たりが強く、人が集めにくい。お前が逮捕されると、人が足りなくなるからむしろ困る」
上司の言葉に、マキノはわずかに安堵の息を漏らした。クビは免れたようだ。しかし、彼の言葉は、マキノへの温情からくるものではない。あくまで組織の利益と人員確保のためだ。
「見つかったのにはしょうがない!ここからは俺の番だ。その手この手を打つ手段がある」
上司の声には、自信が満ち溢れていた。マキノの失敗など、まるで些細なことだと言わんばかりだ。
「というわけで辞令だ、お前とその夫には海外に行ってもらう」
「海外…ですか!?」
マキノは驚いたように顔を上げた。
「海外であれば怖い物知らずだ。そう簡単につかまりはしない」
上司は、冷徹な目でマキノを見据えた。海外へと逃亡させ、ほとぼりが冷めるのを待つ算段なのだろう。
「これまでは義理の息子がいたから派手にやらなかったが、勘当されたんなら派手にやろうじゃないか?」
上司の言葉に、マキノはハッとした。ごうとがにゃももを「本当の母」と慕い、自分を「母ちゃんじゃない」と否定したことが、彼の耳にも入っているらしい。それは、ごうとを利用できなくなったことへの、新たな「自由」を与えられた瞬間でもあった。
「だが、あの校長はそこまで馬鹿じゃねぇから、今後のリスクを考え、仕事のほうもサポートやこれまでいた情報収集、そしてあやつの範囲外となる支部へ主に見てもらうことになる」
上司は、タイタン校長の手腕を認めつつも、その対策を練っているようだった。マキノは、自分の今後の役割について指示を受け、深く頭を下げた。
「かしこまりました」
社長の真の目的
その会話を聞いていた、上司の隣に立っていた男が口を開いた。彼は、上司の腹心といった立場なのだろう。
「社長、マキノを抜けた穴埋めはどうするんですか?」
社長と呼ばれた上司は、ゆっくりと顔を上げた。
「想像以上にあの学園は非常識すぎる。ここは俺が行ったほうがいいだろう」
社長の言葉に、部下は驚きを隠せない。
「え、まさか社長自らが行くんですか!?それになぜそこまで…」
社長が自ら現場に行くことは、よほどのことがない限りありえないことなのだろう。部下は、その理由を尋ねずにはいられなかった。
「口答えをする気か?」
社長の低い声に、部下は慌てて首を横に振った。
「いえ、なぜにあの学園に執着しているのかが気になっていまして…」
部下は、恐る恐る社長に尋ねた。
社長は、ふっと笑みを漏らした。その笑みは、まるで獲物を見つけた猛獣のようだった。
「あの学園には、この国ではまず見られない希少価値があるんだよ」
社長の瞳に、ギラリとした光が宿った。彼は、TITAN学園に、何か計り知れない価値を見出しているようだった。
「俺らの仕事は、それを問い詰めて調査するんだよ」
社長の言葉には、強い意志が込められていた。彼の組織の目的は、TITAN学園の持つ「希少価値」を徹底的に探り出し、それを手に入れることにあるのだろう。
部下は、さらに疑問を投げかけた。
「では、なぜ彼女は食品を盗もうとしたんでしょうか?」
社長は、その問いに何の迷いもなく答えた。
「それは俺が、価値が高い物であればなんでもとってこいと言ってあるからだ。会社というのは、利益をとにかく追求すること。それが、資本の奪い合いなんだよ」
社長の言葉は、まさに弱肉強食の資本主義社会の縮図だった。
彼の組織はメタバース世界においても、利益を最優先に行動しているのだ。
「この件は俺一人で行く。お前はこれからここにこれから来る新たな人物を招くことをしろ。そやつは濃い実績を持つ者だ」
社長はそう言い放つと、ホログラムの会議室から姿を消した。
彼の言葉の通り、TITAN学園、そしてにゃももの周りには、新たな危険が迫っていた。
社長が自ら乗り込むということは、それだけTITAN学園の持つ「希少価値」が高いということだ。
そして、彼が連れてくるという「濃い実績を持つ者」とは、一体誰なのだろうか。
TITAN学園を巡る争いは、新たな局面を迎えようとしていた。
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