「なぜ私らのお金が例外?意味わからん…」
1時間の授業が終わりを告げたが、すいれんの頭の中はまだ疑問符でいっぱいだった。しばぬんは、そんなすいれんの困惑を面白がるように、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「まあ、到底考えられないだろうね…。でもね、向こうの人たちからすれば、これまであった法定通貨以外の選択肢や、他の国の通貨以外の存在がある、っていうこと自体が想像できないものだったんだから、革命なんだよ!」
しばぬんの言葉に、すいれんはハッと閃いた顔をした。 「つまり、向こうの人たちからすれば、異世界のお金を作ったってことか!」
「まあ厳密には違うけどね…。」
しばぬんは苦笑しながら、話を本筋に戻した。 「なぜ仮想通貨が例外かといえばだけど、これは前述の通り、国が指定したお金以外は法定通貨として認めてないからね!でも、なぜ認められるようになったかというと…」
しばぬんは、すいれんの目を見つめ、少し間を置いてから、とびきりの笑顔で言った。 「そりゃあ、人って新しいものには目がないから!」
「ふえ!?」
すいれんは、そのあまりにもシンプルで、しかし的を射た答えに、思わず間抜けな声を出してしまった。
「まあそりゃあ、最初はビットコインとかの仮想通貨とかは、最初はほとんどお金と交換しても1000万円どころか1円にもすら価値がなかったんだよ。だって、誰もそれが何かわからないし、使える場所もなかったからね。」
しばぬんは、誇らしげに語る。 「つまり、**未来のある通貨だ!**って人々はそれに価値を見出し始めたの。インターネットが普及するにつれて、少しずつそれが使える場所が増えて、やがてビットコインなどの仮想通貨は、法定通貨に成り上がる直前まで、通貨として認められる存在になったってわけだ。」
「さて、ここまでざっくりと仮想通貨の歴史について話したけど、どうかな?」
しばぬんの言葉に、すいれんは目を丸くした。 「ええ!?まさか、いつのまに仮想通貨の歴史なの!?」
「仮想通貨の話をしない、なんていつ言ったかな?」
しばぬんは、意地悪そうにニヤリと笑った。すいれんは、まんまと乗せられたことに気づき、頬を膨らませる。
「まあそんなわけで、仮想通貨は本当に多種多様でね!ビットコインなどをはじめ、2000種類以上…いや、多分もっとあると思うな!それぐらい仮想通貨の種類って広いんだ。」
「2000種類って…!国とかが190ぐらいだった気がするから、はるかに超えているな…」
すいれんは、あまりの種類の多さに呆れかえる。自分たちの知る「お金」の概念とは、あまりにもかけ離れた世界がそこにはあった。
「まあだから私は、仮想通貨のことを『お金の民主化』とも言っているんだ。」
しばぬんの声には、強い信念が込められている。 「これまでは、権利があるもの(つまり国)だけが通貨発行を認められなかったのが、仮想通貨で民主化が実現したわけだし。これが今の私たち、このTITAN園の住人たちが、**『オリジナルのお金を作るのが常識』**という考えのもとになるわけね。」
「なるほどなぁ~!いや意味わからん!」
すいれんは、途中で納得しかけたが、結局は理解できないという結論に達したようだ。
「いや、それわかってないじゃん!」
しばぬんは、すいれんの正直すぎる反応に、またしても吹き出した。
「でも、そんな仮想通貨においてなんとなくだけど、今後は私はいくつかのパターンになるんじゃないかなとは思うね。」
しばぬんは、指を一本立てて、未来を見据えるような目で語り始めた。
「例えば、国際通貨用…。これはある意味、事実上のビットコインがその性質が強いね。国境を越えて、世界中で使えるような基軸通貨になる可能性を秘めているわ。次に、売買通貨用…。これは今のところ、イーサリアムとかが多く見られるね。特定のデジタル資産やサービスを売買するための通貨として使われることが多いの。」
しばぬんは、さらに続ける。 「他にも、ゲーム用の通貨とか、個人の健康データを管理・報酬化する健康通貨とか、デジタルファイルの保存や管理に使われるファイル管理用とか…。まあ、今は本当に色々と多すぎるから、『この通貨はそれ!』っていう特定用途のものがたくさんあるけど、正直、混乱を招くし、今後はいろいろと整理されて、特定の用途とかで整備されそうね。」
すいれんは、話の核心を掴んだ。 「つまりは、専用になるってこと?」
「まあ、そうなるだろうね…。なにせ、今の状況は、物々交換に近いのよ。それぞれの仮想通貨が、特定の価値やサービスと直接結びついているから、まるで昔のモノ同士の交換みたいに見えることがある。」
しかし、しばぬんは、現代の仮想通貨と昔の物々交換の決定的な違いを指摘する。
「ただ、昔と違うのはデジタルの存在。今はその数字で表すことができるから、高いか安いかの価値を見合うというのが容易なんだよね。昔の物々交換だと、例えば『この布は米何俵分?』って聞かれても、明確な基準がなかったから、交渉次第で価値が変わったり、不公平な取引が起こりやすかった。でも、デジタル通貨なら、数字がはっきりしているから、誰が見ても価値が明確なの。」
「だから、一目瞭然でぼったくりなのかがバレるから、その分、サービスの品質性は問われることになるよ。質の低いサービスや商品を提供すれば、すぐに利用されなくなるからね。透明性が高い分、作り手側もより良いものを提供しようと努力するようになるの。」
「そうなのねー!」
すいれんは、デジタルがもたらす透明性と公平性に、感銘を受けたようだった。仮想通貨の奥深さと、それがもたらす未来の可能性を、彼女は少しだけ理解できた気がした。
ちょうどその時、TITAN学園に設置されている、どこかレトロな音色の鐘が鳴り響いた。今日の授業の終わりを告げる合図だ。
「よし!今日の授業はここまで!すいれんちゃん、よく頑張ったね!」
しばぬんは、満面の笑みで言った。すいれんは、へとへとになりながらも、今日の授業で得た新しい知識に、どこか興奮を覚えているようだった。
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